【おすすめ】松陰と晋作の志 ~捨て身の変革者~
著者:一坂太郎
出版社:ベストセラーズ
本書は、幕末という混乱期にいち早く日本の方向性とその未来を見据え、日本の歴史に多大な足跡を残していった英傑、吉田松陰とその志を引き継いだ愛弟子、高杉晋作を紹介した著作である。
1853年、ペリー率いる黒船が浦賀沖に姿を現し、日本に開国を迫ると、日本では、衰退していた江戸幕府は開国か攘夷(外国を日本から排斥する事)か、国内は佐幕(幕府を補佐し支える事)か勤王(天皇に忠義を尽くすこと)かをめぐり、激しい政治闘争に明け暮れる混乱期に突入した。そんな中、一人の英傑・吉田松陰が、その膨大な知識と知性、日本諸国を巡って得た見聞をもとに、若い幕末の志士たちの啓蒙者、指導者として多大な影響を与えるようになる。また、その後継者とも言うべき高杉晋作は、師の教えを胸に伊藤博文からメ動けば雷電の如く、発すれば風雨のごとしモと評された類い稀な行動力と、炯眼をもって新しい日本を創るため、命を燃やし、その短い生涯を駆け抜けていった。彼等なくしては、明治維新は起こらず、また現在の日本は語れないと言われている。本書では単に二人の足跡を辿るだけではなく、彼らの出身地であり、倒幕の原動力となった長州藩との関わりや、どのような人々に影響を受け、その志や生涯を決定付けたのか、わかりやすく順を追って紹介されている。そして巻末には、現在でも萩の明倫小学校の朗唱文として使用されている、松陰の言葉が付録されている。
かつて新しい日本を建国するため、私たちの先達が何を大切にし、どのように生きたのか、その軌跡をたどることにより、戦後、欧米の合理主義的価値観への傾倒からきた様々な弊害や国際問題に翻弄され、混迷を極める現代の日本に光明を照らし、見失いがちな日本人としてのアイデンティティ、“志の大切さ”、“公に尽くす心”、“先人の叡智”などに改めて気付かせてくれる珠玉の作品である。