平成心学塾 図書篇 ブック・セレクション #007

【おすすめ】元気 ~人はみな 元気に生まれ 元気の海へ還る~

元気 ~人はみな 元気に生まれ 元気の海へ還る~

著者:五木寛之

出版社:幻冬社

 

日本人の元気は、一体どこへいってしまったのか。戦後60年が経とうとしている日本において、日本人は確実に元気を失っている。ここ数年来の自殺の件数は、平均3万2千人前後という驚くべき数字がつづき、日本は世界一の長寿国にも関わらず、世界に冠たる自殺大国となった。その理由の1つに、前向きで明るく元気よくという事をいたずらに善とし、暗さや憂いを感じたり、悩んだりするものを悪として、それを一方的に拒絶する社会の欠陥が、いま足もとに、黒くぽっかりと口をあけて迫っている。
そもそも元気とは何なのか。一般に元気というと、立ち居振舞いが活気に満ち、表情や目がイキイキ輝き、見るからに健康そうな人間を思い描く。
ですが著者は「元気」とは、「根元」を意味する元気であり、すべてのエネルギーの始源のかたちであり、その実体は「限りなき生命力の根元である」と説いている。人は、その「元気の海」から、元気の一滴を抱いて誕生し、その元気のエネルギーが尽きる時、「元気の海」に還る。そしてその生命の流れに身を置き、感謝して生きること、それが90歳の大往生を遂げた親鸞の言う「自然法爾(他力に任せて生きる)」につながるのではないか。
現代人にとっての真の幸福、死、健康の本質、人生における幸せとは何かを感じ取れる珠玉の1冊である。