【人間学】凡事徹底
著者:鍵山秀三郎
出版社:致知出版社
今や、「掃除の神様」として全国にその名を知られる鍵山秀三郎。毎日、ほうき一本、ちりとり一つで会社の付近を掃き続け、温泉旅館に行けば、他人の洗い桶やスリッパまで揃える。彼の会社では掃除はもちろん、出前の器も必ず洗って返し、車もすべて社員が洗うので、ガソリンスタンドで洗車してもらったことがないという。
合理的でない、生産性がないと考える人は多い。しかし著者は、「自社にとって不都合なことを他者に転嫁しているとどうなるかというと、社員は間違いなくすさんでいきます。思いやりのない集団になって、だんだん心がすさんでいきます」と言う。すさんだ心の集団、会社ほど悲惨なものはなく、いくら経常利益を上げて新聞紙上でどれだけ持てはやされても、そんな会社はいい会社ではない。
「それよりも、郵便を届けてくださる方、出前を持ってくる人、商品を届けに来る人、運送会社の運転手さんといった人に思いやりが持てるような会社でありたいと思います」
著者が東京に出てきたとき、お金もないし、何もない。何ができるかと考えた末、雑巾とほうきとちりとりなら、いくら貧しくても用意できることに気づいた。以来、ものごとをきれいにすることを徹底してきた。その結果が、現在のイエローハットをつくったのだ。
天下に名をなす人物は、みな凡から出て、凡に徹しきっている。「凡事徹底」の四文字こそが商人道の根幹であり、運をつかむこつなのだ。