平成心学塾 図書篇 ブック・セレクション #018

【おすすめ】人間 偉大なるもの

人間 偉大なるもの

著者:江口 克彦

出版社:PHPソフトウェアグループ

 

本書は、PHP研究所代表取締役社長である江口克彦氏の著作である。江口氏の著作を述べるにあたっては、メ経営の神様モと称された、故・松下幸之助氏との関係を外すことはできない。江口氏は松下電気産業株式会社入社後、「心両面の繁栄により、平和と幸福を実現していく」という松下氏の願いのもと創設されたPHP研究所(Peace and Happiness through Prosperityの略、「繁栄によって平和と幸福を」という意味)に配属され、弱冠36歳で、研究所の経営を任されるまでになる。そして松下氏の晩年までの22年間、常にその側で仕事をし、直接松下氏の薫陶を受けてこられた方でもある。
また、有名な財団法人松下政経塾の設立・運営に尽力し、松下氏逝去の後もPHP研究所の様々な執筆活動や講演、理事・客員教授を務めるなど、精力的に多方面で活躍している。そうした活動を通して、人間ひいては自然の真理を追求し続ける内に、著者は『人間は偉大な存在である』という一つの結論に行き着く。本書は「根源」「礼と自覚」「素直な心」「自然の理法」「人間の使命」「衆知」といったキーワードをあげ、「宇宙の大きな生物の枠組みの中では、人間はその枠組みの中の小さな存在に過ぎない。」という意見を生命感傷論として異を唱え、なぜあえて人間が偉大なのか、その理由を正面から論じていく。人間は、メ両刃の剣モのような存在であり、優れた叡智を持ち高潔な魂も持つことができるが、同時に破滅的な過ちを犯すことも可能な地球上で唯一の存在である。その事を正しく理解し、責任と使命の自覚をもって行動しなければ、世界の真の繁栄と平和は訪れないと筆者は訴える。各ページの所々には美しい自然や象徴的な写真で彩られ、文章は日本語と英語の両方で載せられている。
松下氏の志を受け継ぎ、人間通としても名高い著者が到達した究極の答えと、世界平和への願いが込められた渾身の作品である。