『ノッポさんの「小さい人」となかよくできるかな?』 高見のっぽ著(小学館)
「ノッポ流人生の極意」というサブタイトルがついています。「大きい人(大人)」である著者が「小さい人(子ども)」との接し方を、自身の幼少期の記憶や経験から語るハートフルな1冊です。巻末には、著者のオリジナル童話である「こうまははながすき」が掲載されています。
著者は1934年京都府太秦生まれの俳優・作家で、1967年から20年以上にわたって、NHK教育テレビで放送された「なにしてあそぼう」~「できるかな」では、一言もしゃべらずに鮮やかに工作を生み出す”ノッポさん”として出演しました。同時に、作家・高見映として多くの児童書、絵本、エッセイなどを発表しています。82歳になった現在も、俳優・作家・歌手として活躍中。
ここ数年、わたしは著者のことを非常に意識していました。というのも、あるネット記事で、世界の王貞治氏などとともにノッポさんがわたしと同じ誕生日であることを知ったからです。わたしは子どもの頃に「できるかな」を観ていて、ノッポさんが大好きでした。それはもう、彼の相棒のゴン太君になりたいくらいでした。それから、著者がバッタの老人に扮したNHK「みんなのうた」の「グラスホッパー物語」の動画をYouTubeで発見し、何度も何度も観ました。
一度聴いたら耳に残る歌、シュールな映像にも魅了されましたが、何よりもすでに老人の域に達していた著者の華麗なタップが強く印象に残りました。本書を読むと、著者がフレッド・アステアをリスペクトしていたことを知りました。
著者は「子ども」ではなく、「小さい人」という呼び方をします。その理由について、「子どもだからといって、”経験も浅い、物事をよくわかっていない存在”とは、これぽっちも思っていないからですよ」「小さい人たちというのは、実にいろいろなことが分かっているのです。大人が思うよりも、いやおそらく大人よりも、ずっとずっと賢いんですから」と著者は述べます。
著者によれば、「小さい人」は大人に接するとき、「この人は、自分をごまかそうとしていないな」とか、「自分の気持ちを分かっているな」とか思うそうです。そして、そう思ったら、ちゃんと心を開いてくるし、おチビさんなりの誠意を示してくれるというのです。
「できるかな」で大好きだったノッポさんが82歳となった現在でも活躍しているという事実に、わたしの胸は熱くなりました。わたしが小さい人だった頃の著者は見上げるような「巨人」でしたが、今のノッポさんは大切なことを教えてくれる「人生の巨人」だなあと感じました。