『もう明日が待っている』鈴木おさむ著(文藝春秋)
中居正広氏の引退発表で再結成が絶望的となった「SMAP」についてのベストセラーです。著者は、1972年、千葉県千倉町(現南房総市)生まれ。高校時代に放送作家を志し、19歳でデビュー。バラエティーを中心に数多くのヒット番組の企画・構成・演出を手掛けてきました。映画監督、エッセイ・小説の執筆等、さまざまなジャンルで活躍。2002年には、森三中の大島美幸さんと結婚。2024年3月31日に放送作家を引退。
カバー表紙には1本の紐で結ばれた5色の風船のイラストが描かれ、帯には「挑戦、冒険、そして解散――。20年以上、彼らに伴走してきた放送作家にしか書けなかった奇跡の物語。これは『小説SMAP』である。」と書かれています。カバー裏にはバラバラになって空に飛んでゆく5色の風船のイラストが描かれています。表と裏のコントラスト!
本書には、メンバーの脱退、結婚、海外の超大物スターとの邂逅、5人旅、東日本大震災発生10日後の生放送、そして、あの「公開処刑」と呼ばれた生放送、解散・・・国民的グループにずっと伴走してきた放送作家が綴る「涙」と「希望」の物語が本書です。
「スマスマ」の最終回でSMAPが「世界に一つだけの花」を歌い終わってから、かなりの時間が経ったあと、著者はふと、録画してあった放送を久々に見ようと思って見たそうです。彼ら5人がテレビ界で大きな革命を起こし、アイドルという存在と立ち位置を強烈に変えてきた歴史が映し出されていました。
著者は、「最後の歌まで見終わったあとに、もう一度、歌のシーンを見ようと思い、巻き戻した。その時、あることに気づいた。巻き戻しながらあのシーンを見ると。リーダーが右手を上げて親指を曲げ、人差し指、中指、薬指、小指。5本の指を曲げてグーを作り、そして握った手を開く。そこには花が咲いていた。リーダーは、最後の最後に胸を張り右手を挙げて、一生懸命咲かせた。世界に一つだけの花を。いつか、もしかしたら、こうやってやるつもりなのかもと勝手に想像してみたりした。もしかしたら、リーダーはそのことまで考えてやっていたのかもしれない・・・・・・」と楽観的に述懐しています。
本書を読み終えて、長年SMAPと伴走してきた著者だけあって強い「SMAP愛」がうかがえましたが、特にリーダーに対する「中居愛」を強く感じました。しかし、当の中居氏が芸能界を引退し、スマスマを放送したフジテレビが激震の中にある今、著者は何を考えているのでしょうか? わたしは、そのことが最も気になります。
果たして、彼ら5人には、まだ明日が待っているのでしょうか?