『私が見た未来 完全版』 たつき諒著(飛鳥新社)
今回は、「奇書」というか、ちょっと異色の話題になっている本をご紹介します。
「ノストラダムスの大予言」に多くの人々が恐怖した1999年7月に刊行されたコミックの復刻本なのですが、作者は予知夢によって東日本大震災が発生した「2011年3月」という年月を的中させたとのこと。
じつはこの本、弟からプレゼントされたのですが、わたしは本書の存在、また世間で騒がれていることなどもまったく知りませんでした。しかし、アマゾンの書籍総合ランキングで1位になっており、仰天しました。先日、関東で震度5強の地震が発生しましたが、来る南海トラフ大地震への不安がこの本に多大な注目を集めているのかもしれません。
著者は、1954年12月2日生まれ、神奈川県出身。横浜在住。1975年、『月刊プリンセス』(秋田書店)でデビュー。『私が見た未来』は1994~98年に雑誌『ほんとにあった怖い話』および『恐怖体験』上に掲載された漫画をまとめたもので、99年に朝日ソノラマより単行本化。同99年、漫画家を引退。『私が見た未来』の表紙に「大災害は2011年3月」と書かれていることから、東日本大震災を予言した漫画家として注目を集めることになりました。
本書では、22年の沈黙を破って、作者が新たな警告を行っています。「本当の大災難は2025年7月にやってくる」というのです。
そもそも、どうしてそんな予言をする必要があるのか。「作者あとがき」で、たつき氏は「1996年当時、『ほんとにあった怖い話』編集部の『読者の体験談募集』宛には、『大津波の夢を見た』という投稿がたくさんあったそうです。私と同じような予知夢を見た人は、実はたくさんいるのだと思います。『予知』は『警告』です。『避けられる』から『見せられた』。『災難を避ける』『災難を小規模にする』手段があるということだと思います。夢を見た日が現実化する日ならば、次にくる災難の日は『2025年7月5日午前』ということになります。本書が、その心構えのきっかけになってくれることを祈っています」と書いています。
アメリカにエドガー・ケイシーという有名な予言者がいましたが、災害に関する彼の予言はすべて外れました。わたしは、予言や予知というものは基本的に外れるものだと思います。その正否よりも、それによってもたらされる危機感の方が重要ではないでしょうか。
その意味で、作者が示しているのは、大災害等の危機への備え、あるいは、現実的な問題(現在であれば、孤独死や無縁社会の問題など)を克服するヒントのように思えます。このメッセージの方がずっと重要でしょう。