『祈りと希望』「祈りと希望」実行委員会編(経済界)
本書は、東日本大震災後、各地でのツイッターのつぶやきを集めた本です。
大震災は、日本社会の方向性を確実に変えました。わたしたちは、自分たちの無力さを思い知らされたのです。
しかし、そうした現実の中で、多くの言葉が発せられました。そして、それらはいずれも真実の言葉でした。そんな言葉たちについて、編著者の佐々木一成氏は、「私たちは、それらの言葉から、先の見えない将来に立ち向かっていく勇気をもらいました。隣人を愛する思いやりをもらいました。さらに、簡単に答えを出すことなどできませんが、地球上の不幸や苦難が決して他人事ではなく、私たちすべての人間の問題であると学ぶことができました」と述べています。
本書には251の言葉が収められていますが、その中でも以下に紹介するものが特にわたしの胸を打ちました。
「駅員さんに『昨日一生懸命電車を走らせてくれてありがとう』って言ってる小さい子達を見た。駅員さんは泣いてた。俺は号泣してた」
「ヤンキーの兄ちゃんがおばあちゃん背負って避難したり、ヤクザのおじさん達が交通整備したり、見た目DQNな集団が子供の傍から離れられない親の分まで食料受け取って配ったり、二次元クラスタの連係プレーでヤシマ作戦成功させたり、日本人に生まれたことを誇りに思う」
「日本人ってバカだよな。こんなときに暴動も起こさず真面目に規律守ってるんだ。自分も辛いだろうに他人を気遣って手を差し伸べて、暴言を吐かれても仕事を放り出すこともせずに復旧・救命活動して。本当にバカばっかりだ。日本人で良かった」
「そのあと、スーパーに行ったら盲目の人が買い物してて、盲導犬もいて、普段はちょっとけむたいような目で見るのに、色んな人が必要なものあったら、探してきますよとか声掛けてた。優しさが小さくても見えなくても生まれてる。また涙出た。普段ならお節介だよねで見ない振りしてたよね」
「駅のホームで冷たい風に凍えている方へ。隣の人に一歩近づいてみてください。ちょっと暖かいでしょ?風が遮られたでしょ?いま、隣の人があなたのために風を遮ってくれてるように、あなたも隣の人のために風を遮っています」
たしかに、このたびの未曾有の大災害は、わたしたちの心に大きな悲しみを残しました。しかし、あれ以来、日本人が隣人愛にめざめたことも確かだということが本書を読むと、よくわかります。
いよいよ、「隣人の時代」が来ました。