一条真也の人生の四季 『サンデー毎日』連載 94

ご先祖さまへの贈りもの

この夏、みなさんは祭りに参加されただろうか。最近のわがカラオケ定番曲は、北島三郎さんの「まつり」。会社や業界団体の懇親会などで熱唱すると、大いに盛り上がる。
祭りは先祖供養のひとつの儀式として始まった。たとえばお盆だが、これは家族がご先祖さまを供養する。それに祭りの要素が加わったのが、「盆踊り」であり「花火大会」だ。
盆踊りは死者、つまりご先祖さまを楽しませるものとして始まった。わたしの出身地である北九州市小倉では「無法松の一生」で知られる祇園太鼓が夏祭りを彩る。太鼓もまたご先祖さまを楽しませる余興のひとつであった。ご先祖さまを村人が総出でもてなしたわけだ。
秋祭りも、収穫への感謝の儀式だ。天皇家は神嘗祭として、ご自身のご先祖さまである天照大神へ感謝を示すが、わたしたち国民も、それぞれの祖先に感謝を示すのである。
花火大会も死者への慰霊と悪霊退散を祈ったものだ。徳川吉宗が、江戸のコレラ流行、異常気象による全国に発生した飢饉を治めるためと、亡くなった方への鎮魂のために始めたのが隅田川の花火大会である。
花火大会は先祖供養という意味でお盆の時期に行われ、大輪の花火を見ながら、ご先祖さまを懐かしみ、あの世での幸せを祈る。
日本の花火を見て、なんともいえない切なさを感じるのはわたしだけだろうか。ディズニーランドで打ち上げられる花火とは明らかに違う。はかなさが伝わってくるのである。
太鼓、盆踊り、花火、そして祭り・・・・・・これらはすべて、ご先祖さまを楽しませ、もてなすためのエンターテインメントだったわけだ。
わたしは『なぜ、一流の人はご先祖さまを大切にするのか?』(すばる舎)という本を書き上げ、もうすぐ上梓する予定だ。感謝の「こころ」は「かたち」にしなければならない。そして、最も感謝すべき対象は「いのち」を与えてくれたご先祖さまである。
ご先祖さまに贈りものを!