一条真也の人生の四季 『サンデー毎日』連載 21

お雛さまのアップデート

 3月3日は桃の節句、「雛祭り」だ。

 わたしは、弟との2人兄弟である。だから、子どもの頃は雛祭りには無縁のはずだった。しかし、わが実家には雛人形がたくさんあった。母が雛人形が大好きで、コレクションしていたからである。毎年3月になると、人形たちが家中に飾られた。
 わたしには2人の娘がおり、わが家では妻が広島の実家から持参してきた雛人形が飾られる。妻は姉との2人姉妹で、ずっとこの人形で桃の節句を祝ってきたのだそうだ。
 やはり、雛祭りの季節になると、わたしは娘たちの将来に思いを馳せてしまう。親として彼女たちの幸せを祈らずにいられない。
 この「雛祭り」の起源は3世紀前後の古代中国の風習だといわれる。季節の変わり目に災いをもたらす邪気を祓うため、3月最初の巳の日(=上巳)に禊を行っていたようだ。
 この風習が遣唐使によってわが国に伝えられ、天皇の安泰を願う禊の神事となり、平安時代には宮中行事となったのである。
 雛祭りの「ひな」は「雛(ひいな)」であり、小さくかわいらしいものを指す。一方で、人の厄を身代わりする男女一対の紙人形が「ひな人形」の原型とされ、室町期から川へ流すものから飾るものに変化していき、幕末の頃には官女やお囃子も加わり、現在の「雛飾り」へと発展した。
 さて、雛壇の最上段には、男雛と女雛が鎮座しているが、地域によって左右どちらに置くか異なる。京都ではお内裏様を向かって右に飾る。これは京都御所の紫宸殿における御即位に由来し、「左をもって尊し」という古来の風習に則った飾り方だ。
 しかし、全国的に男雛は向かって左に飾られている。その理由はプロトコール(国際儀礼)では右上位であり、明治以降、急速な西洋化の影響で起こったという。昭和天皇の即位の礼では、天皇陛下の左側に皇后さまがお並びになり、そのお写真にならって左右が逆転したのだろう。
 雛祭りもアップデートするのだ。