独言 全互協会員様へのメッセージ『互助会通信』連載 128

被災地での供養

 今回の震災では、わが社の大谷賢博さん(金沢紫雲閣総支配人)の実家が全壊した。彼が元日に能登半島の志賀町にある実家に帰省していた際に震度7の地震が発生したのだ。彼には高齢のご両親がおり、近隣の方々も高齢であったため、震災直後から彼は周囲の人々の安全確保に努めた。
 その後、彼はご両親と一緒に現地の避難所に入った。そこで自衛隊員と共に簡易トイレや簡易風呂を設営した様子をLINEで報せてくれた。
 そんな大谷家は、今年の1月10日に彼の祖母の一周忌を迎えた。被災した大谷家はすぐに菩提寺と料理店に法事のキャンセルを伝えたという。
 それでも一周忌の当日が来ると、大谷総支配人は「何としてでも祖母へのお参りはしなければならない」という思いにかられたという。そして、自宅の中で被害の少なかった玄関の下駄箱に祭壇を設えてお参り出来るようにし、僧侶にお経をあげて頂いたそうだ。
 彼は、わたし宛のLINEで「被災地には『お祈りする場所』が必要なのかもしれません。これは私を含め、今後グリーフケア士が災害支援を行う上での、大きなヒントとなるような気がしました」とのメッセージを送ってきた。
 供養で大切なのは何よりも「こころ」だ。その「こころ」を表す「かたち」は華美なものである必要などない。そう、いま・ここで可能な「かたち」でいいのである。
 全壊した自宅に素晴らしい祭壇を設えた彼はさすが上級グリーフケア士だと思った。彼が避難所で多くの方々の「いのち」と「こころ」を守り、そして極限の状況の中でも素晴らしい供養を行ったことは、わたしにとっても大きな誇りである。能登半島地震の犠牲者の方々の御冥福と、被災者の方々が早く日常生活に復帰できることを心からお祈りいたします。