独言 全互協会員様へのメッセージ『互助会通信』連載 123

コンパッションの時代

 北九州市で開かれた「二十歳の記念式典」で、振袖に墨汁のようなものをかけられる事件が発生。少なくとも11件の被害が確認され、警察では器物損壊容疑で捜査を進めた。被害者の中には、当社ホテルでお世話させて頂いたお客様も含まれていた。当日の全国ニュースに映った衣裳も、じつは当社のものだった。
 当日の夜、お客様のお母様からの連絡で「娘が大変ショックを受けていること」「実家の祖父母へ晴れ姿を見せに行く予定だったこと」を聞いた担当者は、なんとかこの悲しみをケアし、喜びに変えたいと思案。現場からの報告にわたしは、「コンパッションで行きなさい!」と即答した。
 担当者はお客様への慰めの言葉に加えて、「ぜひとも新しい振袖を着て、ご実家に行きましょう!当ホテルで無償で準備をさせて下さい」と訴えた。テレビ各局からの取材を受けたお嬢様は、ホテルスタッフの対応に感謝の言葉を語られた。ホテルへはテレビ局からの取材が相次いだ。
 取材では、わが社が日頃より「コンパッション」をテーマに「お客様に寄り添った対応」を意識していること。事件自体は残念なことではあるが、「祖父母に晴れ着姿を見てほしい」という、お客様の優しい思いに寄り添った対応をすることを何よりも最優先したことなどを担当者が熱く語ってくれた。悲しい事件の中でも「優しさでの上書き」ができたことを各局とも大きく紹介して下さった。
 残念ながら、人間は晴れの日の振袖に墨汁をかけるという非道な行為を行う。しかし、人間は困っている人にコンパッションを提供し、そのグリーフをケアすることもできるのである。非道には人道で対抗すべきではないか!
 なお、くだんの担当者には、「コンパッション社長賞」が授与された。