コンパッション!
『ウェルビーイング?』と『コンパッション!』の2冊を本名で書き、同時刊行した。
40年前から「ウェルビーイング」を追求してきたわが社は、「コンパッション」というコンセプトに行き着いた。
東京大学名誉教授の島薗進先生から教えていただいたのだが、「これだ!」と思わず叫ぶほどの衝撃を受けた。
島薗先生は「コンパッション都市」という考えを示された。老い、病、死、死別を支える「悲しみの共同体」のことで、アメリカでは行政や葬儀社が中心になって、その創造に努めているという。そして、そこではグリーフケアの専門家が大活躍しているとか。
わたしは、わたしは、コンパッション都市こそ、互助会にとっての究極の目標だと確信した。
「コンパッション」を直訳すれば「思いやり」ということになるだろうが、その言葉が内包している大きさは「思いやり」を超えるものだ。
キリスト教の「隣人愛」、儒教の「仁」、仏教の「慈悲」など、人類がこれまで心の支えにしてきた思想にも通じる。
わたしは当初「コンパッション」が「ウェルビーイング」(持続的幸福)を超えるものと位置づけ、『ウェルビーイングからコンパッションへ』という本を書こうと思い立った。
ところが、深く知れば知るほど、「コンパッション」と「ウェルビーイング」は陰と陽というか、お互いが補完し合う関係であることに気がついた。そして、その両方がなければ、社会は良くならないことも悟った。結果、わたしは今回の双子本を書いたのである。
持続的幸福を意味する「ウェルビーイング」には欠けているものがある。すなわち、「死」や「死別」などに対するケアの視点だ。それを補うものこそ「コンパッション」であり、両者が一体となって「ハートフル・ソサエティ」が実現する。