独言 全互協会員様へのメッセージ『互助会通信』連載 120

葬式復活から儀式再生へ

 宗教学者・島田裕巳氏の最新刊『葬式消滅』が話題だ。直葬などの登場で、日本の葬儀はますます簡素で小さくなってきた。島田氏は、見送る遺族がお骨を持ち帰らないという「〇葬」を提唱し、「高額な戒名も不要、お墓も不要となってきた」と訴える。
 島田氏は、仏教の根本は悟りにあるとして、「これからの仏教は、ふたたび釈迦の悟りとは何かを問うものになっていくのではないでしょうか。もし仏教が、そちらにむかうのだとしたら、それは、仏教と葬式の関係が切れた成果なのかもしれないのです」と結論づける。しかし、これはインド仏教と日本仏教を混同した考えだと言わざるをえない。
 インドで誕生した仏教は、「輪廻転生」という考えを内包していたが、中国人はそれを受け容れずに「浄土」という考え方を打ち出した。
 中国で仏教は大きく変容し、そこから浄土教信仰が生まれる。ここで中国の土着の宗教である儒教が影響を与えた。
 中国仏教は儒教の「孝」の思想を取り入れ、追善供養というメソッドを編み出した。追善供養の代表が、故人の命日に行われる年忌法要である。
 こうした考え方が日本にも浸透することで、日本の「葬式仏教」の体制が確立され、曹洞宗を中心に発展していく。
 インド仏教、中国仏教、日本仏教を仏教として一緒くたにせず、別の宗教と理解すべきである。一方、日本人の「こころ」は以上の仏教と、儒教、神道の三本柱から成り立つ。その共通項は「先祖供養」であり、役割といえば「グリーフケア」ではないだろうか。
 日本人のグリーフケアの舞台は寺院からセレモニーホールに移行していく流れにあり、今後の冠婚葬祭互助会の役割と使命はきわめて大きいと言える。いたずらに悲観的にならず、葬式復活から儀式再生を目指したい。