独言 全互協会員様へのメッセージ『互助会通信』連載 141

「民禮」の発見

 第49回の日本アカデミー賞は 「国宝」が最優秀作品賞、主演男優賞(吉沢亮)、監督賞など10部門で最優秀賞に輝く10冠の快挙を達成した。
 「国宝」は、吉沢亮が演じる歌舞伎役者が史上最年少で人間国宝になる物語だったが、もちろんフィクションである。リアルの世界での史上最年少国宝となったのは、陶芸家の第十四代今泉今右衛門氏だ。
 このたび、わたしは小倉の松柏園ホテルで今右衛門氏と2日にわたって対談する機会に恵まれた。「こころ」と「うつわ」と「かたち」をめぐって、日本文化の本質について大いに語り合った。
 対談の中で工芸研究の第一人者である柳宗悦の名前が出た。「民藝」という言葉を世に送り出した民藝運動の父として知られる人物である。それまで顧みられなかった、無名の職人が作る日常の雑器に「用の美」を見出し、その美学的価値を体系化した。
 今右衛門氏との対談の中で、わたしは儀礼文化の話をした。宗教儀礼から直接導き出され、大きな発展を遂げた代表的なものといえば、茶道が第一にあげられる。茶道からは華道が派生した。
 茶の湯には茶器、生け花には花器、いずれも陶器を「うつわ」として使う。儀礼文化は工芸文化によって完成すると言えるかもしれない。
 さらに「民藝」に言及したわたしは、「民禮」という新しい言葉を提唱。「有職故実」に代表される宮中儀礼などと一線を画す民衆的儀礼を意味する。具体的には「冠婚葬祭」や「年中行事」のことだ。
 歌舞伎や大相撲や茶道や華道も素晴らしいが、本当の意味で日本文化を継承し、守っているのは民衆ではないか。年中行事や冠婚葬祭といった日々の生活の中に「礼」は息づいているのである。民藝が民衆的工芸なら、民禮は民衆的儀礼なのだ。