君の忘れ方
1月17日から映画「君の忘れ方」が全国公開された。
グリーフケアについての拙著『愛する人を亡くした人へ』(PHP文庫)が原案である。
この映画は、なんといっても主演である坂東龍汰さんの演技力と存在感に負うところが大きい。坂東さんを初めて知ったのは「春に散る」という映画だ。同作で坂東さんはボクシングの日本人王者の役で、横浜流星が演じる主人公の挑戦を受けるのだが、その試合シーンがド迫力だった。
西野七瀬さんもヒロインの美紀を好演された。映画「52ヘルツのクジラたち」で彼女はシングルマザーを演じた。それがわが子をネグレクトおよび虐待する鬼のような女で、本当に憎々しい役であった。
その演技があまりにも真に迫っていたので、わたしは「もしかして西野七瀬は本当に嫌な女では?」と不安に思っていたのだが、実際にお会いしてみると礼儀正しく素敵な女性で安心した。
「君の忘れ方」には、恥ずかしながら、わたしも出演している。佐藤という名のフューネラル・ディレクター役で、美紀の葬儀で彼女の遺影を祭壇に飾り、一礼する役だ。撮影はテイク2でOKが出たが、アドリブで遺影に向かって合掌してから一礼した。
原案の『愛する人を亡くした人へ』を書いた18年前は、まだ「グリーフケア」という言葉を知る人はほとんどいなかった。それが今では時代のキーワードになりつつある。全互協から冠婚葬祭文化振興財団に受け継がれた資格認定制度では、グリーフケア士の数が1300名を超えた。
あのとき、わたしは孤独だったが、今ではもう過去の話。「わたし」から「わたしたち」への大いなる転換を実感している。グリーフケアに続いて、冠婚葬祭の文化振興においても、ぜひ映画の力を活用したいと考えている。