令和こころ通信 『西日本新聞』連載 第24回

何事も陽にとらえる

 平成が令和となった昨年の5月からスタートした本連載も1年が過ぎ、最終回となった。

 新型コロナウイルスの感染拡大はパンデミック(世界的大流行)に発展した。日本においても、全国に「緊急事態宣言」が発令され、7月開催予定の東京オリンピック・パラリンピックも1年延期が決定した。

 言うまでもなく、オリンピックは平和の祭典である。悲しいことだが、古今東西、人類の歴史は戦争の連続であった。有史以来、世界で戦争がなかった年はわずか十数年との説もある。

 戦争の根本原因は人間の憎悪であり、それに加えて、さまざまな形の欲望や他者に対する恐怖心への対抗などが悲劇を招いてきた。しかし、それでも世界中の人々が平和を希求し、さまざまな手法で模索し続けてきたのもまた事実である。

 国際連盟や国際連合の設立などとともに人類が苦労して生み出した最大の平和装置こそが、近代オリンピックであることは間違いないだろう。

 現在のわたしたちは、深く考えることなく「WHO」や「IOC」などの国際機関の名前を口にするが、これらは想像を絶する苦労の末に生まれたグローバルな合意の表れなのだ。

 その意味では、国連もWHOもIOCも、すべて人類の叡智の果実なのである。

「グローバリズム」とは、地球を1つの共同体と見なす思想だが、この「正のシンボル」がオリンピックだとしたら、パンデミックは「負のシンボル」だということを知る必要がある。

 何事も陽にとらえる。

 これは父から受け継いだわたしの信条だが、今回のパンデミックを陽にとらえ、前向きに考えるとどうなるか。それは世界中の人々が国家や民族や宗教を超えて、「宇宙船地球号」の乗組員だと自覚したことに尽きるのではないだろうか。

 新型コロナウイルスに人類が翻弄される現状が、わたしには新しい世界が生まれる陣痛のような気がしてならない。

 こんなに人類が一体感を得たことが過去にあっただろうか。戦争なら戦勝国と敗戦国がある。自然災害なら被災国と支援国がある。しかし、今回のパンデミックは「一蓮托生」だ。

 その意味で、「パンデミック宣言」は「宇宙人の襲来」と同じかもしれない。新型コロナウイルスも、地球侵略を企むエイリアンも、ともに人類を「ワンチーム」にする存在なのである。

 新型コロナウイルスを克服した後に開催される五輪こそ、真の「人類の祭典」となる。

 世界は必ず良くなる。あなたはきっと幸せになる。そう信じて、ともに前に進んでいこう!

 1年間のご愛読に感謝します。