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ムーン・ハートピア

 古代人たちは「魂のエコロジー」とともに生き、死後への幸福なロマンを持っていました。その象徴が月です。彼らは、月を死後の魂のおもむくところと考えました。月は、魂の再生の中継点と考えられてきたのです。多くの民族の神話と儀礼のなかで、月は死、もしくは魂の再生と関わっています。規則的に満ち欠けを繰り返す月が、死と再生のシンボルとされたことはきわめて自然だと言えます。地球上から見るかぎり、月はつねに死に、よみがえる、変幻してやまぬ星なのです。
また、潮の満ち引きによって、月は人間の生死をコントロールしているという事実があります。さらには、月面に降り立った宇宙飛行士の多くは、月面で神の実在を確信したと報告しています。月こそ神の住処であり、天国や極楽、つまりそこは魂の理想郷「ムーン・ハートピア」なのです。
約10万年前のネアンデルタール人の墓が、トルコにあります。この墓から出土した化石を手がかりにして、考古学者はネアンデルタール人が死者を花の上に寝かせて埋葬したことを突きとめました。このことから、ネアンデルタール人が「死」を祝い事とみなしていた、つまり、人間が死ぬということは別の世界へ移り住むことだと考えていたのがよくわかります。そしてその別の世界こそムーン・ハートピアであり、ネアンデルタール人の埋葬から10万年後、「月への送魂」によって、人類はついに魂をダイレクトに霊界に送るアートを獲得するのかもしれません。

一条真也
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