平成心学塾 文化篇 グランドカルチャーのすすめ #017

小唄

今でもときどき見られますが、二階の日当たりのよい部屋を隠居部屋として使っていた古い家があります。隠居した人はそのような部屋で主に何をしていたかというと、小唄をうたっていたのです。
小唄というのは、他人に聞かせるためではなく、あくまで自分たちの酒の席、宴席で唄って楽しむものです。そのため“ばち”を使いません。四畳半のような狭いところでやるので、他人の迷惑にならないよう、音を小さくしているのです。いま、小唄と呼ばれているものは清元お葉が端唄から別れて、歌沢とは別な三味線小曲の道をたどりました。
小唄はほんの数分の短い曲に、遊郭の苦界に身を置く人をはじめとした世の苦しみや、恋のやるせない思いを込めてうたったものがたくさんあります。いわば、フランスのシャンソンやポルトガルのファドのようなものでしょうか。
小唄には「いき」があります。