平成心学塾 文化篇 グランドカルチャーのすすめ #006

水墨画

水墨画は中国にはじまり、日本に伝わりました。日本で西洋美術の影響も受けつつ、四季のある日本の自然環境と溶けあって、日本人の生活や美的感覚によって深められてきました。
「紙」と「墨」と「水」が筆の仲立ちによって交わり、ときにはにじみ、ときには反発しながら、墨は紙の上に描かれます。そして白と黒だけで展開される水墨画の表現は、「幽玄」という一語で形容されるほど、多くの人々に共感とある種のあこがれを与えてきました。水墨の山水画に描かれる風景、いわゆる深山幽谷は仙人の住む山中の理想世界をイメージさせ、そこに心を遊ばせるのです。
霧に包まれた山々の峰が、車窓の奥をゆったりと流れていく。木漏れ陽の中に小鳥の影がよぎる。旅先でそんな幻想的な光景に出会ったとき、人々はたまらないほどのノスタルジーを感じ、光と影の濃淡が演出するその世界をたとえて「まるで水墨画のようだ」と讃えます。