庭園
かつて日本には伝統的な庭園の美学が存在していました。京風の庭、茶室の庭から小さな坪庭、下町の露地の庭まで、日本人にとっての庭は自然と渾然一体となっていました。日本人はいかに人の手をかけないで自然のままの景観を自分の庭に取り込めるかを考え、人工的な造作や植え込みにしても、自然らしく見せるさまざまな「見立て」にこだわりをもっていたのです。まぎれもなく庭には自然が凝縮された非日常的な小宇宙があり、先人たちはここでくつろぎ、自由に心を遊ばせました。そして庭の彼方に、いつの日か訪れるであろう「浄土」を想ったのです。
現在、イギリス発の「ガーデニング」が大ブームになっています。自分自身で手をかけ、四季の花やハーブを育てる文化は、ある意味「庭」の文化を伝統としてもっていた日本人にはなじみやすいものでした。日本庭園にせよ、イングリッシュ・ガーデンにせよ、花と土を相手にする行為は魂を解放させてくれます。
庭づくりは瞑想的な行為なのです。