琴
古代中国でも古代ギリシアでも、人の心は琴にたとえられました。琴は聖なる楽器であり、神秘的な楽器だったのです。
日本では「筝」とも呼ばれ、奈良時代直前に唐より日本に伝わり、当初は雅楽の管弦楽奏用の楽器の一つとして使用されてきました。日本の筝曲の発祥は築紫流と言われています。これは、久州久留米の善導寺の僧侶だった賢順が雅楽と琴曲の影響を受け、筝の音楽を室町時代末期につくったのです。その後、十七世紀ごろに八橋検校があらわれ、この検校を始祖として現在のような筝曲が発展し、三味線同様いろいろな流派が生まれました。
現在、大正琴がブームになっていますが、このアイディアの原形は「一絃琴」であると言われています。これは中国から日本に伝わって以来、僧・公家・武士など特に男子に好まれました。幕末には、坂本龍馬ら勤皇の志志たちが、一絃琴の稽古と称しては同士を集め、密会を重ねていたというエピソードも残されています。