盆栽
なぜ人は盆栽のようなミニチュアの庭をつくったのでしょうか。広い場所がないから、やむをえず小さくしたのではありません。中国では、小宇宙の中に大宇宙があるということがよく知られています。物の姿をかたど象ることは、単に物を呼び起こすだけではなく、物を作り出すことなのです。さらに縮小されることによって自然は、神話的かつ神秘的な世界にまで高められると信じられたからです。自然は小さければ小さいほど、自然の景観の威力をもちます。また、小さければ小さいほど、霊妙で、不思議な効能を発揮するのです。すなわち、自然を模倣し縮小することで「盆栽」は仙境となり、人はそのミニチュアの世界で心を遊ばせるのみならず、そこから霊力と活力を得ることができるのです。
これは現代心理学の「箱庭療法」にも通じることで、崑崙山でも桃源郷でもよいのですが人は盆栽を何かに見立て、そこに物語をつくっていく。そして、その物語のもつ力によって、人の心は癒されるのでしょう。