シネマの街を世界へ 『西日本新聞』連載 002

明日に希望を託して

風と共に去りぬ

 

映画史上に燦然と輝く名作「風と共に去りぬ」という作品があります。
米南部の大農園の令嬢であり、絶世の美女でもあるスカーレット・オハラが愛や戦争に翻弄されながらも力強く生き抜く姿を描いた作品です。何度見ても感動してしまいます。
わたしは、小学6年生のときに「風と共に去りぬ」と出合いました。1975年10月のテレビ放送を見たのです。普段は夜遅くまでテレビを見るのは許されないのに、その日の夜は母と一緒に最後まで見たのでした。主役のオハラを演じたヴィヴィアン・リーの美しさに一目ぼれしたわたしは、「将来、この人に似た女性と結婚したい!」と思いました。巨大ポスターをパネルにして、勉強部屋に飾りもしました。ずいぶんませた小学生でしたね。
テレビ放映ではヴィヴィアン・リーの吹き替えを俳優の栗原小巻さんが担当しましたが、ラストシーンの「明日に希望を託して」というせりふが子ども心に深く残りました。原作では”Tomorrow is another day.”というせりふです。訳書では「明日は明日の風が吹く」となっています。それをテレビでは変えて、栗原さんが力強く言い放ったのです。わたしは非常に感動し、「明日に希望を託して」はわたしの座右の銘となったのでした。
「風と共に去りぬ」は1939年に製作された米国映画です。同じ年、北九州に小倉昭和館が誕生しました。昨年8月に焼失してしまいましたが、近年は洋画、邦画、そして欧州やアジアのミニシアター系作品が主に上映されていたようです。ただ、米アカデミー賞(1940年)で作品賞などを受賞した「風と共に去りぬ」はリアルタイムで上映したと聞きました。
時を経て2016年に創業77周年を迎えた際、わたしはその祝賀会に参加し、出席していた栗原さんにお会いしました。その際、栗原さんに少年時代の感動のお礼を申し上げました。栗原さんは、とても喜んでくださり、まことに至福の時間となりました。