「万物は数である」ピタゴラス
言葉は、人生をも変えうる力を持っています。今回の名言は、古代ギリシャの数学者で哲学者のピタゴラスの言葉です。
数学と聞いただけで嫌な顔をする人もいますが、数学ほど面白いものはありません。
関ケ原の合戦の翌年に生まれたフェルマーの最終定理が証明されたのは約360年後の1995年。有史以来で最高の数学者と評されるガウスが天才ぶりを発揮していたのは、江戸時代の謎の浮世絵師・写楽と同時期ですし、ピタゴラスやユークリッドは紀元前の人物です。
このように受験勉強とは無縁の世界で遊んでみると、数学は俄然面白くなります。
ピタゴラスは、「万物は数である」という有名な言葉を残しました。たしかに、あらゆるものは数字に置き換えられることに気づきます。1人の人間は年齢、身長、体重、血圧、体脂肪、血糖値などで、国家だって人口、GDP、失業率などで表わされます。企業も同様で、売上、原価、利益、株価といった諸々の数値がついてまわります。
わたしは、2001年に社長に就任しました。ちょうど38歳のときでしたが、そのころ、アカデミー作品賞に輝いた「ビューティフル・マインド」という映画を観ました。ノーベル賞を受賞した天才数学者ジョン・ナッシュの生涯を描いた作品ですが、予想に反して面白い内容でした。これを観てから数学の魔力にとりつかれ、多くの数学書を読破した経験があります。
社長に就任したとき、わたしがまず決心したのが、「数字に強い社長になろう」ということでした。それまでは、数字というものをあまり意識したことがありませんでしたし、高校のときから数学には苦手意識を持っていました。はっきりいって、数字には弱かったのです。しかし、社長になったことで、計数のことを学び直さなければならない必然性にかられたのです。
わたしが社長を務める会社は、冠婚葬祭業、すなわち儀式産業です。考えてみると、人生の区切りとしての通過儀礼も数の世界です。七五三をはじめ、20の成人式、61の還暦、70の古希、77の喜寿と、長寿祝いは100の上寿まで続きます。四十九日や十三回忌に代表される追善供養や年忌法要も数のオンパレードです。
人は死ぬまで、また死んだ後も数と関わってゆくのですね。ピタゴラスの「万物は数である」にならえば、わたしは「人生は数である」と言いたいです。