『コーラン』
いま、地球上のあらゆる地域でイスラム教が急激にその勢力を拡大している。
キリスト教に次いで、世界で2番目の信者数を誇るイスラム教の啓典が『コーラン』である。
正しくは『クルアーン』と呼ばれるべきで、それは「読誦」を意味する。というのも、開祖であるムハンマドは神の啓示を受けたとき、彼はヴィジョンによって教えられた原典を読誦せざるをえなかったからだ。
聖書の一連の預言者たちの最後となる預言者ムハンマドに対して、大天使ガブリエルは神の言葉を伝えたのである。
ある意味で『コーラン』とは、『旧約聖書』と『新約聖書』を否定するのではなく、それらを補強し、かつ凌駕する『新・新約聖書』だ。
この原典は預言者の最初の聴衆にあるがままに伝えられたが、今度は彼らがそれを読誦し、ラクダの肩甲骨や皮片の上にそれを書き記した。
しばらくしてムハンマドへの神の啓示は終わり、3年後にしか再開しなかった。それ以来、神の啓示は規則的になされ、預言者は秘書にそれらを口述筆記させた。少しずつ、信者は断片的な原文集を作成した。ムハンマドが死んで、完璧で唯一の訂正本を確立する必要が生じたのである。
『コーラン』は絶えず、神の「しるし」あるいは「メッセージ」を解読する知性の必要を強調する。イスラム教徒は世界を注意深く、そして好奇心をもって見つめる。
イスラム教徒はしばしば『コーラン』を翻訳で読むと、別の本を読んでいるように感じるという。それはアラビア語の美しさがまったく伝えられていないからだ。
「読誦」を意味する名前が示しているように、それは声高く朗唱されるべきものであり、その言葉の響きこそが本質なのである。