『旧約聖書』
『旧約聖書』は、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教という世界三大「一神教」に共通の聖典である。いつか、三教による共同訳が実現すれば、世界平和につながるはず。
キリスト教やイスラム教を生んだユダヤ教は、いわゆる『旧約聖書』を「トーラー(律法)」「ネイビーム(預言者)」「ケトゥビーム(諸書)」の3つの基本的な部分に分類している。略してそれを「TNK(タナハ)」という。
すなわち本来の意味でのトーラーである「モーセ五書」と「預言者」、そして他の文書とである。この3つが集まって、いわゆる『旧約聖書』となるわけだ。
「モーセ五書」には、ハリウッド映画の「天地創造」や「十戒」のスペクタル・シーンで有名な「アダムとイヴ」「カインとアベル」「ノアの方舟」「バベルの塔」「エジプト脱出」「モーセの十戒」をはじめとしてスリリングな場面が次から次に展開する。文学作品でもあるのだ。
わたしは、『旧約聖書』の本質は、図書館のごとき文書の集大成だと考えている。それぞれに含まれる書物の成立年代も、紀元前10世紀から紀元前2世紀にわたっており、口伝の詩歌などは紀元前12世紀頃にまでさかのぼる。
これを日本に当てはめてみると、8世紀の『古事記』『日本書紀』から、10世紀の『古今和歌集』、11世紀の『源氏物語』、13世紀の『平家物語』、14世紀の『徒然草』を経て、17世紀から18世紀の井原西鶴や近松門左衛門の文学的作品、さらには19世紀の『蘭学事始』や『金色夜叉』までが含まれてしまうことになる。もしそれが刊行されたとしたら、日本歴史・文学大全集とでも呼ぶべきものになる。
『旧約聖書』とは、このように途方もなく巨大なスケールを持った書物なのである。