ハートフル・メッセージ サンレー会員様へのメッセージ『ハートライフ』連載 第21回

「本を読んで心を太らせよう!」

わたしは、本が好きで、とにかく毎日読んでいます。会社を経営しているので、もちろんビジネス書も読みますが、その他にも歴史や哲学や科学の本、それに小説など、とにかく何でも読みます。本好きが高じて、自分でも本を書きますし、最近は大学の客員教授として学生さんたちに読書指導も行っています。

経営者としてのわたしは、『論語』やドラッカーの経営書などを繰り返し読み、その教えを活かしています。よく「読書が大事なことはわかっているけれど、忙しくて読むヒマがない」と言う人がいます。しかし、逆だと思います。本当は、「本を読まないから時間がない」のではないでしょうか。

ビジネス書には、努力の末に成功した人の知識や経験やノウハウがたくさん書かれています。その人が何年も何十年もかけて体得した奥義を、わずか一冊の本を読むだけで得ることができるのです。人間は経験のみでは、一つの方法論を体得するのに数十年もかかります。でも、他人の経験を借りて、それを一日で可能にする読書ならば、最短の時間と最小の労力で成功にたどり着けるわけです。そのうえで自分なりの工夫を加えればよいのです。つまり読書とは、時間を短縮するタイム・ワープの方法に他なりません。

プロイセンの鉄血宰相(さいしょう)ビスマルクに「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という有名な言葉があります。西欧の人々は主にローマ帝国の衰亡史などを参考に人間理解をしてきました。日本人は『十八史略』や『三国志』などの中国の歴史書によって人間研究をしてきました。歴史を知れば、「驕(おご)る平家は久しからず」の言葉のように、傲慢になることを防ぎ、非常識な行為や馬鹿な真似をすることもありません。つまり、知恵がつくのです。

教養は人間的魅力ともなります。かのユリウス・カエサルは古代ローマの借金王でしたが、その原因の一つは、自身の書籍代だったそうです。当時の知識人ナンバーワンは哲学者のキケロと衆目一致していましたが、その彼もカエサルの読書量には一目置きました。

当時の書物は、高価なパピルス紙に筆写した巻物でした。当然ながら高価であり、それを経済力のない若い頃から大量に手に入れたため、借金の額も大きくなっていったのです。カエサルは貪欲に知識を求めたのです。その結果として、豊かな教養を身につけていたに違いありません。人類史上もっとも人気のある人物の一人である彼の魅力の一端に、その豊かな教養があったことは疑いもないでしょう。

わたしは、教養こそは、あの世にも持っていける真の富だと確信しています。あの丹波哲郎さんは80歳を過ぎてからパソコンを学びはじめました。霊界の事情に精通していた丹波さんは、新しい知識は霊界でも使えると知っていたのです。ドラッカーは96歳を目前にしてこの世を去るまで、『シェークスピア全集』と『ギリシャ悲劇全集』を何度も読み返していたそうです。死が近くても、教養を身につけるための勉強が必要なのです。

モノをじっくり考えるためには、知識とボキャブラリーが求められます。知識や言葉がないと考えは組み立てられません。死んだら、人は精神だけの存在になります。そのとき、生前に学んだ知識が生きてくるのです。そのためにも、人は死ぬまで学び続けなければなりません。財産といえば、現金や有価証券や不動産や宝石などが思い浮かびます。でも、破産したとき、差し押さえの係官がやってきて持っていかれてしまうものばかりです。誰もけっして奪うことができないもの、それは頭の中に蓄えられた知識であり、心の中にある志です。その知識や志のことを「教養」と呼ぶのです。

教養は、差し押さえの係官に持っていかれません。逆に、あの世には持っていけます。現金も有価証券も不動産も宝石もあの世には持っていけません。それらは、しょせん、この世だけの「仮の富」なのです。教養こそが、この世でもあの世でも価値のある「真の富」なのではないでしょうか。

そして、読書の最大の目的とは、心をゆたかにすることにあります。私のブックレビューサイト「一条真也の読書館」では、心をゆたかにしてくれる素敵な本たちを紹介しています。その中には、親子で楽しめる、童話や絵本などもたくさん入っています。よい本は心のごちそうです。体はスリムな方が健康によいですが、心には栄養をたっぷり与えましょう。これからはどんどん、本を読んで心を太らせてみませんか?