一条真也のハートフル・ライフ 『終活WEBソナエ』連載 26

無縁社会を乗り越える映画『縁(えにし)』

こんにちは、一条真也です。

 日本映画「縁(えにし) The Bride of Izumo」を観ました。昨年9月26日から出雲で先行ロードショーを行い、今年の1月16日から全国で順次公開している作品ですが、わたしは小倉で鑑賞しました。
■時空を超えた人間のつながり描く
 今や日本を代表する美人女優である佐々木希をヒロインに迎え、出雲出身の新鋭、堀内博志が監督を務めています。撮影監督は巨匠クリストファー・ドイルです。「神話の国」として日本の原風景を残す島根県出雲市を舞台に、時間と空間を超えた人間同士の不思議なつながりを描いています。
 主人公の真紀(佐々木希)は都内大手出版社のウエディング情報誌の編集者です。翌月に自身の結婚式を執り行う予定だった彼女は、両親のいなかった自分を育ててくれた祖母がこの世を去り、遺品の整理をします。祖母の遺品の中に、桐の箱に残された白無垢(しろむく)と共に束ねた大量の婚姻届がありました。「どうして、こんなものを遺(のこ)したのだろう。おばあちゃんには婚約者がいたのだろうか?」と疑問を感じた真紀は婚約者の和典(平岡祐太)と一緒に、幼少時に暮らした島根県出雲市へと向かいます。そして、出雲で人間の「縁」というものの神秘を感じるのでした。
 この映画のテーマは「縁」ですが、まず夫婦の縁について描いています。そもそも縁があって結婚するわけですが、「浜の真砂」という言葉があるように、数十万、数百万人を超える結婚可能な異性のなかからたった1人と結ばれるとは、何たる縁でしょうか!
 また、「縁(えにし)」という映画タイトルには「夫婦の縁」の他にも、さまざまな縁が込められています。たとえば「家族の縁」などがそうですが、中でも特に「親子の縁」がよく描かれていました。
 いま、「無縁社会」などと呼ばれています。わたしは冠婚葬祭会社を経営していますが、「縁こそは冠婚葬祭業界のインフラである」と、ことあるごとに言っています。ですから、わが社では、各種の儀式の施行をはじめ、最近では地域社会の人々が食事をしながら語り合う「隣人祭り」や「婚活セミナー」などに積極的に取り組み、全社をあげてサポートしています。これらの活動は、すべて「無縁社会」から「有縁社会」へ進路変更する試みだと思っています。
■人間にとっての「幸福」の正体とは
 わたしたちは1人では生きていけません。誰かと一緒に暮らさなければなりません。では、誰とともに暮らすのか。まずは、家族であり、それから隣人です。考えてみれば、「家族」とは最大の「隣人」かもしれませんね。現代人はさまざまなストレスで不安な心を抱えて生きています。ちょうど、空中に漂う凧(たこ)のようなものです。そして、わたしは凧が最も安定して空に浮かぶためには縦糸と横糸が必要ではないかと思います。
 縦糸とは時間軸で自分を支えてくれるもの、すなわち「先祖」です。この縦糸を「血縁」と呼びます。また、横糸とは空間軸から支えてくれる「隣人」です。この横糸を「地縁」と呼ぶのです。この縦横の2つの糸があれば、安定して宙に漂っていられる、すなわち心安らかに生きていられる。これこそ、人間にとっての「幸福」の正体だと思います。
 この世にあるすべての物事や現象は、みなそれぞれ孤立したり、単独で存在しているのではありません。他と無関係では何も存在できないのです。すべてはバラバラであるのではなく、緻密な関わり合いをしています。この緻密な関わり合いを「縁」と呼びます。そして、縁ある者の集まりを「社会」と呼びます。ですから、「無縁社会」という言葉は本来おかしい表現であり、明らかな表現矛盾なのです。
 「社会」とは最初から「有縁社会」なのです。そして、この世に張り巡らされている縁は目に見えませんが、それを可視化するものこそ冠婚葬祭ではないでしょうか。結婚式や葬儀は、その人と縁のある人々が集まって、目に見える儀式だからです。ちなみに、この映画は結婚式がテーマですが、冒頭では名作「おくりびと」を彷彿(ほうふつ)とさせる葬儀のシーンが流れました。
 ちなみに「おくりびと」とは葬祭業に携わる人々を指すことが一般的ですが、わたしは冠婚業に携わる人々のことを「むすびびと」と呼んでいます。
■神前こそ日本人にふさわしい結婚式
 映画のラストシーンは、晴れて出雲大社で結婚式を挙げた真紀の白無垢姿でした。それはあまりにも美しく、わたしは「日本人には和が似合う!」と心の底から思いました。そして、日本人の結婚式はやはり神前結婚式がふさわしいとも思いました。
 神道は「八百万(やおよろず)の神々」をいただく多神教です。寛容的であり、平和的です。神道という平和宗教と、結婚という人間界最高の平和は基本的に相性が良いのではないでしょうか。そして、結婚とは「結魂」です。神前式は、荒魂(あらみたま)、奇魂(にぎみたま)、幸魂(さきみたま)、和魂(くしみたま)が1つに結び合わされる結魂が成し遂げられる場であり、そこで新郎の魂と新婦の魂も固く結ばれます。一度、結魂を果たした魂同士は簡単には離れにくいのです。日本人の離婚の数を減らすためにも、ぜひ神前結婚式を見直す必要があると思います。